I が入る終脳の位置

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Iが入る終脳の位置

 

    知覚の回路は対側の視床を目指す、という法則は、Iだけを例外に、脊髄神経・脳神経のすべてについて成り立っている。

 

    Iの回路は、知覚の回路のうち唯一、間脳を通らず直接終脳に入る。Iは入力系なのだから終脳の後半部に入ると期待されるが、実際には前半部と後半部の境界付近に入る。なぜだろうか?その理由として2つの仮説が考えられる。
●Iが入る終脳は何葉か?
≪図 I が終脳に入る位置≫

 

    ひとつは、動物の身体の最も頭側に鼻があり、脳は脊髄に対して背側へ屈曲するため、背側の終脳に入っていたI神経が、身体の形と脳の屈曲にあわせて前方に引っ張られる形になったため、終脳後半部の中でも比較的前方に入ることになった。
≪図 終脳の屈曲と鼻方向への引っ張り≫

 

    もうひとつは、ヒトの身体は鼻と泌尿生殖器との間に後から上肢・下肢ができたもので、嗅覚は最も古い知覚の機能である。そのため、脳が入力系と出力系に十分分かれていない混沌の時期の状態を残しているため、前半部分と後半部分の中間的位置に入ったままになっている。

 

    Iの回路が到達する大脳皮質の位置を脳モデルの冠状断で見ると、等高線理論のとおり、身体のもっとも頭側に相当するので最も赤道側である。それに対して生殖器に関する知覚の回路が到達する位置は、身体の最も尾側に相当するので最も北極側である。
≪図 Iと生殖器の知覚の入る位置と回路の終点の位置≫

 

    身体では鼻と生殖器との間に上肢・下肢が発達したのに応じて、中枢神経では、上肢・下肢からの知覚の回路が到達する終脳上の位置は、赤道と北極との間にわき出るように発達した。この結果、完成した脳では、赤道は間脳にもっとも近い位置で内側へ押し込められ、北極も間脳にもっとも近い位置で内側へ押し込まれた。
≪図 鼻と生殖器の知覚の回路の到達点は奥まっている≫
●大脳辺縁系と鮭の遡上
●Iの回路は交叉しない

 


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