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バランス理論
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運動抑制機能は、脊髄前角に対して運動促進機能に拮抗するように抑制的にはたらき、結果として過剰に反射が生じない状態をつくっている。だから、運動抑制機能が障害されると反射が亢進したり、病的反射が出現する。また、運動促進の回路が障害されて麻痺が生じる際に、運動抑制の回路も同時に障害されることが多く、その場合麻痺は弛緩性ではなく痙性になる。
●錐体路障害で痙性麻痺
●運動のグループ分け(前出)
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脊髄前角の細胞には、筋を収縮させようとする運動促進的な自動能がある。運動促進機能・運動抑制機能の回路は、共に終点は脊髄前角である。したがって、運動促進機能(+)・運動抑制機能(−)・脊髄前角の運動促進的自動能(+)の3つがバランスをとって働いていると考えられる。
≪図 運動促進・運動抑制・脊髄前角自動能によるバランス≫
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この3つのどの部分が障害されるかによって、弛緩性麻痺が出るか痙性麻痺が出るかを説明できる。
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運動促進機能(+)だけが障害される場合、具体的には、大脳皮質運動野のみ、または延髄の錐体のみに障害がある場合、バランスは相対的に(−)優位となるので、筋を収縮させることができず、弛緩性麻痺となる。
≪図 運動促進のみの障害≫
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脊髄前角だけが障害される場合(例えばポリオ)、バランスは相対的に(−)優位となるので、筋を収縮させることができず、弛緩性麻痺となる。
≪図 脊髄前角細胞のみの障害≫
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運動促進機能(+)と運動抑制機能(−)が同時に障害される場合(脳の病変で運動促進の回路が障害される場合、ほとんどの部位で回路が並走しているのでたいてい運動抑制の回路も障害される)、バランスは相対的に(+)優位となるので、筋を収縮させる側に傾き、痙性麻痺となる。
≪図 運動促進と運動抑制が同時に障害された場合≫
●急性期の麻痺