●急性期の麻痺
たいていの脳血管障害では、麻痺が起こる場合は、運動促進と運動抑制の回路がほとんどの部位で並走しているので、運動促進と運動抑制の両方が同時に障害されるから、バランス理論上痙性麻痺となるはずだが、実際は急性期には弛緩性麻痺である。これは、2つの機能の回路を構成する神経線維の性質が異なるために障害が出るまでに時間差があるため、急性期には運動促進機能のみが、続いて運動抑制機能も障害されるものと考えられる。運動促進機能の方がより新しい機能、運動抑制機能の方がより古い機能で、新しい機能ほど脆いことを反映している。運動抑制機能の回路が、筋緊張維持機能と同様に運動前野(#6)や、もっとも古い構造である脳幹網様体を通っていることは、この機能が比較的古いものであることを裏付けている。