●錐体路障害で痙性麻痺
教科書ではしばしば「錐体路障害で痙性麻痺が生じる」と記載されているが、この記載は混乱を招くので注意が必要である。まず、運動抑制機能の回路は錐体は通らないので、錐体路系ではなく、錐体外路系に属する(本書ではこのようなグループ分けはしない)。つぎに、錐体路を回路とする機能つまり運動促進機能の障害だけでは弛緩性麻痺になり、痙性麻痺にはならない。痙性麻痺になるのは同時に錐体外路の機能である運動抑制機能の障害があることによる。つまり、「錐体路障害」が錐体路(運動促進の機能の回路)と錐体外路(運動抑制機能の回路)の両方を含んでいる点、麻痺が「痙性」になるのは錐体路障害(運動促進機能)のせいではなく錐体外路(運動抑制機能)の障害のせいである点で、二重に混乱している。